「成長」している意識
スポーツを続けていく上で、自身が「成長」していることを意識し、または実感できることは、大切な“振り返り”と考えています。
自己成長する方法を経験し、成長することの喜びや実感を得た人は、次ステップへ踏み出せますし、少々難題な課題・テーマに対しても、チャレンジする心意気が生じやすくなります。
ある時期においては成長の停滞、いわゆるスランプ(またはプラトー*)もあるでしょうが、要因や対策を突き止め乗り越え、成長促進に繋がれば、その期間の行為さえも成長した証なのでしょう。
ここでは、自己成長を意識する大まかな3つのタイプについて、まとめてみました。(もちろん他にもありますので、ご容赦ください。)
その3つのタイプとは、「自己満足型」「自己効力型」「他者評価型」です。
自己成長を客観的に振り返り、成長するためのポイントを自己理解することで、モチベーション向上・保持にもつながり、さらに成長スピードを加速するかもしれません。
成長を意識できず悩んでいる方も実際にいます。自分の現状と人間関係を含む環境を分析しつつ、改善していくことが望ましい場合は、ひとつのヒントになればと考えます。
自己成長を感じず、自己評価を下げることによる、「行動しない!」という行為をしないためです。
「自己満足型」タイプ
“できる”こと、“知ること”が増える喜び、目標となるものの達成、計画したことの成就などによって満足を得るタイプです。
教えてもらったことや学んだことに挑戦し“できた”こと、目標数値(例:タイム、回数など)を順調に達成すること、レギュラーを勝ち取ること、テクニックのレベルが向上すること、大会に出場できること、試合で勝てることなど、具体的な目標(どちらかと言えば短中期的目標)となるものを達成した時に得られる満足感を求めて、成長していくタイプです。
「自己効力型」タイプ
“できる”こと(または“できる”と信じたこと)を踏まえ、企画したり、新たなものを創ったり、構築したりすることによって、効力感・達成感が増すタイプです。
新たな未知の領域、未体験ゾーンに足を踏み入れ、納得できる結果(成果)をもたらした時、人は成長を感じます。
体験によって“できるかなぁ”という不安が“できる”確信となり、自信となります。その際の過程で、他人が決めたプロセスをこなすのではなく、自らが企画、実践したことが重要な要素です。
その未体験ゾーンの難易度が高ければ高いほど、自己成長している実感は大きいと判断できます。
自身のことはもちろんのこと、自己の行為(企画、支援・援助、推進、育成・コーチングなど)によって、チームや先輩後輩・家族・他者などが目標・目的を達することで、達成感・貢献感・有能感が増していきます。
自身のイメージを具現化することの喜びを求めて成長していくタイプです。
「他者評価型」タイプ
尊敬する人などから褒めてもらう等の高評価を獲得した時に、自分の成長を素直に感じることができるタイプです。
親などの家族から、先輩後輩から、指導者から、ファンなどから、褒められたり、讃えられたりすることで、成長していることを実感・理解します。つまり、客観的な評価を基準としている傾向のタイプです。
『上手いね』よりも『上手くなったね』『出来るようになったね』というように、現在だけの褒めの言葉ではなく、過去と現在の差を踏まえた表現に反応します。
自らの行動・支援などによる良い成果があったとしても満足の少ない人は、他者による評価を大切にします。
「自己満足型」「自己効力型」「他者評価型」の3タイプを備えていることで、モチベーション向上・保持の自己統制が可能ではないかと考えます。
問題としては、一つのタイプに偏ってしまっている場合です。
偏ってしまうことでの危うさを想定する
「自己満足型」に偏る危うさ
①目標設定が低くないだろうか?
②チャレンジがないのではないのか?(出来る範囲のみ実行?)
③目標達成が目的になっていないか?
④エゴ(俺はオレ、あなたは他人)に固持してないか?
⑤私は悪くない!の思考になっていないか?
そもそもの目標設定が低いことで(設定自体を間違ったことで)、結果的に成長が乏しい場合もあります。
失敗することを恐れ、容易に成功(達成)できる目標を設定をし、その達成に満足していることで、成長度が低空状態である懸念もあるわけです。
小さな目標設定を連ねていく方法=スモールステップ(またはベビーステップ)という方法はありますが、(心理面での処置法として取り入れている時以外は)それは大きな目標・目的があった上でのことです。
周囲が見えておらず、基準となるものが曖昧だと『この程度でいい』という感覚に陥りがちです。目先の欲求を対象としてしまうことで「自己満足」の感覚に溺れる人もいるようです。
「自己満足」で成長促進させるためには、目標や目的意識などの基準を高次元にすることがポイントなのかもしれません。
またチームの中での個人の場合には、全体目標より自分自身の目標を優先してしまう傾向があります。『自分さえ良ければ』というタイプです。
連係を疎かにしたりするようなことがあれば色々な問題が発生し、成長を阻害するような環境・人間関係になる可能性もあります。思い描いた結果が出せない時には過剰なストレスを感じたり、時に他者や環境の責任に転嫁したりする、アナジー課題*が生じることもあるでしょう。
チームおよび個人の目標をも同時に達成していくためにも、協調性と共有性を持った上で、自身のモチベーションを向上させる行動を続けることが、自己成長につながると考えられます。
「自己効力型」に偏る危うさ
①“できる”ことの判定を間違っていないか?
②自信過剰、自己過信になっていないか?
③“できなかった”時に責任転嫁していないか?
④他者の目的が主体になっていないか?(ボランティアに?)
⑤『自分の責任だ』と追い込んでいないか?
“できる・だろう”の判定を誤ってしまうこともあります。つまり、自身の能力や力量などを見誤ることです。これまで達成してきたことによる自信が思考を歪め、過信してしまう可能性があります。『私ならできる!』という思いは大切ですが、冷静さと客観性を失い、無謀なチャレンジをすることもあるでしょう。順調にいかない時、そもそもの目的を忘れ、達成・成功することが目的化してしまうことも。
また『あの人にできるなら、私にもできる』という思い込みが、最悪の結果を招くこともあるかもしれません。
“できる・だろう”と信じてトライしたことが“できなかった”時、またそれが繰り返された時に、自信喪失になることもあります。
それによって、トライすることを諦めたり、トライするハードルを下げたりすることもあります。(それ自体は悪いことではないです。)
“できなかった”原因を他者へ責任転嫁する癖がついてしまうと、厄介です。
また自己犠牲的になってしまう傾向があります。
先難後獲ならともかく殺身成仁、つまり「世のため人のため」のタイプに多く、労力の割には成長が乏しいこともあります。やりがい感はあるにしても、期待値より成果が低い際、『自分の所為だ』『己が未熟だからだ』などと、過度の責任帰属*を負い、自己暴虐・自信喪失に陥ることもあるのではないでしょうか。
自己犠牲心が行き過ぎると、自己の目標、あるいはチームの目標においても達成は二の次、三の次になってしまうことで、最低の結果を招くことさえもあります。
精神面における「セルフ・コントロール」の重要性が問われるところかもしれません。
チームとの相互作用を含めて自分自身を成長させる、セルフ・マネジメント能力が必要になってくると言えます。
「他者評価型」に偏る危うさ
①褒められることへの執着がないだろうか?
②人の評価で左右されていないか?
③気持ちの浮き沈みが激しくないか?
④自己分析ができていないのではないか?
最も危ういのは、「自己評価」ができないことです。つまり自己分析ができないことによる、強み弱み、長所短所などの主観的概念が乏しいことにつながります。
「他者評価」が自身の言動の基準になっている場合、常に自分の言動に不安を抱き、あるいは他者の目を気にして行動することになっていきます。
褒めてくれる人、評価してくれる尊敬・理想とする人(メンターやロールモデルなど)の存在が前提のため、そのような方が傍にいなければ成長を実感することが難しいのではないでしょうか。
向上心よりも、役割を無難に果たすことを意識してしまう状態になる可能性があります。
褒めてくれる人がいたとしても、褒めてもらうことが目的になってしまうことで、“その人がどんなことで褒めてくれるのか”に意識が向き、成長という意図から外れる行動になることも否定できません。
褒めてくれる、時には厳しく注意してくれる人がいることで、自分の言動の良し悪しの基準が定まり、それらが価値観を作り上げていきます。
褒めてくれる親がいる子どもと、いない子どもの成長度の違いは、想像しやすいかもしれませんね。スポーツの場合、褒め方や叱り方で成長度合いが変わってくると予想がつくのではないでしょうか。例えば、『上手い』『かっこいい』『いいねいいね』などの表面的な褒め言葉をひたすら掛け続けられる子ども(選手)と、『以前よりボール運びが早くなってきた』『さっきより腕の振りがコンパクトで良くなってきた』などと具体的箇所に対する褒め言葉を適宜に伝えられる子ども(選手)とでは、スポーツへの取り組み方も違ってくるでしょう。
稀だと思いますが、今まで好評価してくれていた人が突然、悪評価に転じたり傍からいなくなったりすると、やる気が失せたり落胆したりするタイプもいます。裏切られたという思いが生じると、反抗的になったり、やめたりすることもあるでしょう。
「他者評価」への偏りは、依存的であり自らの目的や使命から外れる可能性はあります。人間関係の境遇によって左右されないように、目的意識と価値観を明確にしつつ、社交性やコミュニケーション能力などを大切にすることがポイントになってきます。
これらの3タイプをバランスよく備え、環境と時期に適した自己成長をもたらす行動が必要と考えます。成長を意識することに注力するというより、モチベーションアップにつながるパターンを理解し、成長の機会を増やしていくことが必要なのではないでしょうか。
自己を成長させる3つのエネルギーを理解すると、さらに促すことができます。 続く